それでも、日本人は「戦争」を選んだ [単行本(ソフトカバー)] 加藤 陽子 (著)

それでも、日本人は「戦争」を選んだ

それでも、日本人は「戦争」を選んだ

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5つ星のうち 3.0 会議で戦争は始まらない 2009/9/18
By レモンパイ

形式:単行本(ソフトカバー)
五つの戦争の戦争に関する資料をじっくり読み込み、良く咀嚼し語られている。
しかし、資料主義に徹するあまり,肝心の社会全体の流れが把握されていない。
第二次大戦について評するならば、以下のような社会情勢に全く触れられていない。

(1)1929年の世界恐慌、1932年のオタワ会議に端を発するブロック経済
   より、持たざる国であるドイツと日本が経済的に追い込まれていったこと。
(2)そういった中で、ソビエト革命発の社会主義イデオロギーが世界に拡散し、
   ドイツではナチス、日本では右翼社会主義的思想の台頭を許したこと。
(3)日中戦争の激化に伴い、日本はABCD方包囲陣により、経済はさらに悪化し、
   アメリカの石油禁輸により、エネルギーが枯渇することが必然となったこと。
(4)中国では「通州事件」が起き、アメリカでは「絶対的排日移民法」が成立し、
   日本人の人種・民族感情が極限に達し、政治家、軍部を戦争に駆り立てたこと。

加藤氏の解説では、あの悲劇の戦争がなぜ起こったかは誰も分からないのではないか。
多くの人が日本は戦争の反省が足りないというが、「A級戦犯」が悪かった。軍部が
悪かった。というだけでは、何も得るものはないだろう。
当時の社会問題を冷静に分析すれば、戦争に至る道には、「ブロック経済
イデオロギー問題」「エネルギー問題」「民族感情」等々の問題が重要な位置を
占めていたことに気づく。そして、これは今こそ私たちが問い直すべき問題だと思う。